6年の水泳の時間の様子です。
いつものように運動場で準備体操をして体をほぐします。
が、
子どもたちは、衣服を着たまま。
体操を終えてシャワーへと向かいましたが、衣服を脱ぐことはなく、そのままシャワーと腰洗い槽へ。
「べったりひっついている」
「気持ち悪い」
などと言いながら歩いていって、プールサイドに並んでもそのまま。
この時間は“着衣泳”。
衣服を身につけたまま水に入るとどうなるかを体験し、万が一のときに命を守る術のひとつを学ぶ時間です。
ということで、いつもの体育の水泳と同じように活動は進みます。
衣服を身につけたまま…、
プールサイドに座って水をかけたら水の中に入り。まずは歩いたり走ったり。
「うわっ」
「重い」
子どもたちから声が上がりました。
続いて軽く泳ぎます。
水からプールサイドに上がる子どもたちは、とても大変そう。
衣服が水を吸って、とても重くなっていますなっています。
次は、いつもの自分のコースで25m泳ぎます。
泳ぎ終えてプールサイドをスタート位置に戻っていく子からは
「(服が体にひっついて)腕が上がらへん」
「(水を吸っているから)めっちゃ重い」
「(体が自由に動かせず)泳ぎにくい」
「疲れる」
「200m泳いだくらいばてる」
など、水着で泳いだ時とは比べ物にならないほどの泳ぎにくさや体への負担を表す声が聞かれました。
服を着たままで、いつものことをしてみて感じたことをみんなで出し合った後、ペットボトルを使った救命方法の学習へと移りました。
一人の子が指名されてプールの中へ入って“要救助者”に。
そこへ、もう一人がペットポトルを投げました。
しかし、この方法に問題が。
教師が子どもたちにこの子の行動で足りなかったことを尋ねますが、そのことは出てきません。そこで、私が出しゃばって挙手。子どものペットボトルを借りて実演しました。
投げる前に、ペットボトルの中に、少し水を入れるのです。
なぜそうするか、どんな利点があるのか、すぐ子どもたちは気づきました。
ペットボトルをつかんだ要救助者は、ペットボトルを抱きかかえて、静かに水に浮いていました。
ここでまたまた教師が問いかけました。
「とっても上手です。いいところはどんなところですか?」
これは、子どもたちもわかりました。
「何もしなかった」ことです。
ペットボトルに身を委ね、何もせずに水の上を漂っていたことなのです。
助けが来るまで、体力を残すことが何より大事ですから、流されても構わないので、ただただ力を使わずに浮くことが求められるのです。
それでは全員が体験しましょう。
ペットボトルを持って水に入り、ペットボトルを両手で抱えて、水に身を任せます。
プカーン
ユラユラ
どんぶらこ、どんぶらこ
あちこちで気持ちよさそうに仰向けになっている子どもたちは、まるで、貝やイカを胸に乗せて海面を漂うラッコのようでした。
学習の終わりは、水の中で身につけた衣服を脱ぐこと。
これも、濡れて体にまとわりつく衣服を、しかも水の中で脱ぐのですから容易ではありませんし、体力を使います。
万が一の時に、「パニックになるな」「あわてるな」ということは、子どもにとってはとても難しいことだと思いますが、衣服を身につけたまま水の中に入ってしまうことの恐ろしさを身をもって感じ、命を守る一つの術を学んだことが、自分の命を守るための危険回避行動や、命を助ける行動につながってくれることを願います。
もうすぐ楽しい夏休み。
子どもたちが安全に水遊びを楽しむこと、水の事故にあわないことを何より切に願います。